研究概要 |
In_2O_3にSn^<4+>をドーブすると同時に格子内に過剰酸素が持ち込まれ、それが電子を捕獲するためにSn^<4+>のドープ量から期待されるほどにキャリア電子が生成しないことを、次により実証した。 (1) In_2O_3とSn^<4+>を5および7at.%ドープしたc-希土構造の単相のITO焼結体を作製し、それらの粉末の真密度をアルキメデス法により測定した。得られた密度は、格子間の過剰酸素の生成を仮定して格子定数から計算した密度と良く一致した。 (2) Er^<3+>のf-f電子遷移のうち^4I_<15/2>→^2H_<11/2>の遷移の振動子強度は、Er^<3+>の配位環境に敏感であることは知られていた。この性質を利用して本研究では、Er^<3+>をプローブとしてドープしたIn_2O_3,ITO(4at%Sn^<4+>)を作製し、Er^<3+>の^4I_<15/2>→^2H_<11/2>の遷移の光吸収を測定することにより、Sn^<4+>ドープによるIn^<3+>の配位環境の変化を調べることを試みた。Er^<3+>ドープしたIn_2O_3の^4I_<15/2>→^2H_<11/2>遷移による光吸収スペクトルは、In_2O_3と同じc-希土構造のY_2O_3にEr^<3+>ドープした場合と良く一致した。一方、Er^<3+>ドープしたITOではIn_2O_3の場合と比較して、522nm付近のStark準位の吸収が明らかに小さかった。CaF_2型構造のCeO_2にEr^<3+>をドープした場合は、ITOに比較してさらに522nm付近の吸収は小さかった。CeO_2中のEr^<3+>は8または7配位であるため、522nm付近の吸収が小さいスペクトルは8または7配位のEr^<3+>の特徴といえる。従って、ITO中でもEr^<3+>の配位数は7または8であると推測できる。 以上からIn_2O_3にSnO_2をドープすると、c-希土構造に存在する空の陰イオンサイトに酸素が導入されるため、Sn^<4+>が有効なドナーとして働かないことが実験的に示された。
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