本研究では、メカニカルアロイング(MA)法をイオン伝導性ガラスの作製に適用することを試み、得られた試料のイオン伝導特性および電気化学的特性を検討し、よりイオン伝導性が高く、安定な材料を合成する条件を確立することを目的としている。本年度の研究により得られた成果は以下の通りである。 1. MA法によるAgI-Ag_2PO_<3.5>系非晶材料の合成と電気化学的特性 P-AgIおよびAg_2PO_<3.5>結晶を原料として、MA法による非晶材料の合成を試みたところ、60mol%AgIの組成では約40時間のミリング処理により非晶質相が得られること、得られた非晶質相は融液急冷法によって得られたガラスと同等のイオン伝導性を示すことを明らかにした。さらに、完全に非晶質化するまでのミリング過程において、融液急冷法によって得られるガラスよりも約1桁高いイオン伝導性を示すことが明らかになった。 2. MA法によるAgI-Ag_3PO_4系材料の合成と電気化学的特性 P-AgIおよびAg_3PO_4結晶を原料として、メカニカルミリング処理を行った。この系においては80mol%AgIを含む組成ではミリング処理しても非晶質することなく、90時間以上のミリング処理により、全く新しい結晶相が析出し、この新結晶相が室温において7x10^<-2>Scm^<-1>を超える非常に高いイオン伝導性を示すことを見出した。 3. MA法によるAg_2S-SiS_2系非晶質材料の合成とイオン伝導特性 Ag_2SおよびSiS_2結晶を原料としてメカニカルミリング処理を行った。この場合、Ag_2S含量が0mol%から80mol%の広い範囲で非晶質材料が得られ、これらの非晶質材料が10^<-3>から10^<-2>Scm^<-1>という高いイオン伝導性を示すことを見出した。
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