テルライトガラスの粘性挙動とガラス組成との相関を明らかにするために、二元系および三元系テルライトガラスのガラス転移(Tg)近傍の粘度を貫入法により測定した。一般的にガラスの粘度は、Tgにおいて10^<12>Pasと言われているが、本研究で検討した全てのガラスにおいて、Tgにおける粘度を見積もったところ10^<10.5>-10^<11>Pasと低いことが明らかとなった。このTgにおける低い粘度はテルライトガラスの大きな特徴といえる。 アルカリ金属酸化物を含有する二元系テルライトガラスにおいてアルカリ金属酸化物のイオン半径の増大に伴い粘性流動の活性化エネルギーが低下し、26K_2O80TeO_2ガラスでは447kJ/molとテルライトガラスの中では低い値を示すことが明らかとなった。また、二種類の異種アルカリ金属酸化物を含有する三元系においては混合アルカリ効果によってさらに粘性流動の活性化エネルギーが低くなり、より粘度が温度によって変化しにくくなっていることが示された。特にLi_2OとK_2Oを含むガラスにおいては、その低下が顕著であった。 アルカリ金属およびアルカリ土類酸化物を含有する三元系においては、異種カチオンの混合によって、粘度および粘性流動の活性化エネルギーに極小が現れるものではなかった。特にBaOおよびK_2Oからなる三元系では異種カチオンの混合によって粘性流動の活性化エネルギーに極大が現れる結果となった。 熱安定性の評価として結晶化挙動の速度論的解析を行った。ガラス組成としては、析出結晶とガラス組成が等しい20Na_2O80TeO_2ガラスを選んだよガラスの自由表面および内部で結晶化は進行しないことが直接観察によって明らかとなった。基板-ガラス界面では、結晶が三次元成長していることが観察され、その結晶成長の活性化エネルギーは、436kJ/molであった。核形成を進行しやすくするため、ガラス表面を研削によって荒らした試料においては、表面結晶化が進行し、結晶が二次元成長していることが確認された。結晶成長の活性化エネルギーは292kJ/molであった。前者との活性化エネルギーの相違は、結晶成長機構の違いが原因と考えられる。
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