研究概要 |
Fe-Ni双結晶の応力誘起マルテンサイト(M)変態の挙動に関して研究を行った。今回用いた90゚<211>対称傾角粒界を有するFe-32at.%Ni双結晶は、粒界面が{211}面に対して垂直であり、主すべり面である{111}面が荷重軸<149>方位に対して45゚の角度を有し、隣接する結晶が鏡像関係にある。このFe-Ni双結晶において、応力により誘起されたM晶は双結晶界面を優先核生成サイトとし、粗大なレンズ状を呈していた。また、双結晶ならびに単結晶試料に同一荷重軸方位にて応力を負荷した場合、いずれの結晶においても変態温度は負荷応力の増加とともに上昇した。また、全体として双結晶の方が、変態温度が高温側へシフトしており、双結晶界面が応力誘起M変態により生成するM晶の優先核生成サイトとなるとともに、変態温度を上昇させることがわかった。また、応力誘起M変態により生成されるM晶とγ母相との方位関係をSEM-EBSP法にて解析した。その結果、いずれのM晶もγ母相との間でNishizawa-Wassermann(N-W)の関係を満たしていた。さらに、12種類のN-W関係をBain関係に対応するG1,G2,G3の3つのグループに分類すると、双結晶粒界および粒界近傍にて形成されたM晶は、G2またはG3の特定のバリアントを選択していた。一方、単結晶試料の場合は、G1も含んだ全てのバリアントのM晶が生成した。格子変形モデルによれば、本実験で選択した荷重軸方位では、G2またはG3のバリアントが選択されることが示唆される。したがって、双結晶界面は、M晶の優先核生成サイトとなるのみならず、バリアントの選択性をも支配している可能性があり、今後、詳細な検討が必要である。
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