研究概要 |
高温での材料の破壊は一般に結晶粒界で生じることが多く,そのため作用する応力に直交する粒界を除去することを意図して一方向性凝固Ni基超合金タービン翼が開発された.また,さらに進んだ航空機用単結晶動翼も実用化されている.GE(General Electronic)社が航空機用のRene'N5合金単結晶を発電用タービンに適用することを発表したため,国内外で発電用タービンへの単結晶材の適用の動きが加速している.しかし,実用化を前にして深刻な問題が生じている.タービン動翼は中空構造の複雑な形状をしているため,凝固過程で局部にひずみが集中する.また,製造プロセス中にサンドブラスト工程が入るため表面に圧縮ひずみが発生する.高温の熱処理過程をその後に入れると,これらのひずみを駆動力として再結晶粒が形成する可能性がある.また,リサイクル及び余寿命延長のため,多結晶材では粒界に生成するキャビティを焼結するHIP(Hot Isostatic Pressing)処理が必要になるが,粒界のない単結晶ではキャビティが少ないため,再熱処理だけでリサイクルすることできる.ただし,作動中に蓄積したひずみにより,再熱処理後,再結晶が生じる可能性がある.単結晶材は,溶体化温度を高めるため,融点を下げる粒界強化元素を除去しており,再結晶が生じると高温強度は著しく低下すため,再結晶粒の発生を抑制することは極めて重要である.そこで,研究代表者は,Ni基超合金単結晶において,IN731-modefied合金に必要最小限の共晶γ'粒子を微細分散させ,再結晶を抑制することにより,タービン動翼材としての信頼性およびコストパフォーマンスを向上させることができることを明らかにした.
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