研究概要 |
本研究では,有機シリコン化合物を原料とした高周波プラズマCVDにおける,低いプロセス温度での反応メカニズムを実験的に明らかにし,さらに,その結果に基づき,室温で高純度酸化シリコン薄膜を合成するプロセスを開発することを目的とした.本年度は,原料の有機シリコン化合物として,テトラメチルシラン(TMS)と酸素を用い,プラズマ中でTMSがどのような形に変化するかを,質量分析計,CCDカメラと分光器を用いたプラズマ発光分光分析器により調査した.さらに,高感度フーリエ変換赤外吸収分光分析(FTIR)装置によって,成膜中の膜表面における化学結合状態を調べた. 質量スペクトルにおけるTMS(m/e=88)のピーク強度は,プラズマを発生させると約1/30以下に激減し,検出された質量ピークのほとんどは,質量数45以下に存在した.このことは,導入したTMS分子のほとんどが,高周波プラズマによって質量数の比較的小さなガス種に解離されることを示す.すなわち,TMS分子の解離反応に対しては,本研究のプラズマ条件は十分であるといえる.導入した酸素分子は,Si-0-Siネットワークの形成と炭素成分の除去に消費されるが,酸素分圧比が50%以下では質量スペクトルに酸素分子が検出されなかった.この条件において作製した膜のIRスペクトルには,Si-CH3結合が検出された.一方,酸素分圧比が50%以上の条件では,質量スペクトルにおける酸素分子(m/e=32)のピーク強度が酸素分圧比にともなって上昇し,作製膜中の炭素成分も検出されなかった. 以上の結果から,以下の結論が得られた. (1) 炭素成分を含まない酸化シリコン成膜のためには,プラズマ中に酸素分子が存在することが必要である. (2) 質量スペクトルを測定することによって,適切な酸素分圧を決定できる.
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