研究概要 |
1 Fe-30Cr合金(フェライト系ステンレス鋼)単結晶の圧縮変形と再結晶 Fe-30Cr合金単結晶を<111>圧縮変形したところ,特殊な,幅の広い変形帯が形成された。この変形帯中では,3つの異なる{110}すべり面上でのすべりが活動していた。焼鈍後は変形帯の内部のみが再結晶し,再結晶粒の方位は変形帯の方位に対して<110>-回転で記述できるものが多数を占めていた。また,<110>-回転関係の出現頻度は<110>軸によって大きく異なり,特に2つの回転関係が強い選択性をもって現れた。その回転方向は,変形に伴う変形帯の結晶回転方向の逆になっている。 2 Fe-11Cr-19Ni合金(オーステナイト系ステンレス鋼)単結晶の引張変形と再結晶 1で述べたような変形と再結晶に関する原則は,面心立方構造のステンレス鋼においても確認された。4つの異なる引張方位を有するFe-11Cr-19Ni単結晶試験片の静的再結晶について調査した。いずれにおいても<111>-回転関係を有する再結晶粒が多く出現する。再結晶粒の母相に対する回転方向は,変形に伴う母相の回転方向の逆になっている。一方、変形によって結晶方位がほとんど変化しない場合(多重すべり方位)は,再結晶粒の回転方向に偏りは見られない。以上の結果は,現在,Materials Trans.,JIM誌およびISIJ International誌に投稿中である。 3 結晶構造の異なるステンレス鋼における1,2の実験結果は,再結晶は変形により導入された転位の種類に支配されるとする我々の考え方を裏付けるものである。
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