溶融塩KCl-BaCl_2-NaF-B_2O_3-ferroboron、処理温度1273K、処理時間5時間でTiAlの溶融塩ホウ化処理を行なった。TiAlとしてTi-46at%Al、Ti-48%Al、Ti-52%Alを用いた。処理後の試料は走査電子顕微鏡による断面組織観察、X線回折法による組織の同定を行った。更に未処理材とホウ化処理材の静止大気中で1173Kにおける耐酸化試験を行い、表面経時変化を観察した。TiAlの溶融塩ホウ化処理によって、ホウ化物皮膜としてTiB_2層が2〜6μm程度生成した。Ti-46at%Al、Ti-48%Alの場合にはSEMによる断面観察から、ラメラ粒界にホウ化物が形成し、TiB_2層とTiAl母相界面は凹凸が激しいことが判った。ラメラ組織内でもTi_3Al、TiAl粒界にホウ化物が見られた。これらはホウ素の拡散速度が粒内よりも粒界の方が大きいことによると思われる。一方、γ単相組織であるTi-52%Alの場合そのようなことはなく、TiB_2層とTiAl母相界面は緩やかな凹凸があった。前者のような界面ははTiAl母相と皮膜との密着性を向上させることが期待される。耐酸化試験での表面観察の結果は以下のようであった。即ち、未処理材の場合、酸化時間5時間程度で表面全体に白い膜が形成した。酸化時間の増加と共に膜の剥離と白い膜の形成を繰り返した。一方ホウ化処理材の場合、白い膜と黒い膜が形成が観察された。白い膜は柱状晶で多孔質のTiO_2と考えられ、これは脆くて剥離しやすい。TiB_2はほとんど酸化しないので、母相のTiAlが酸化されて形成したと思われる。一方黒い膜は細かい結晶粒で緻密なAl_2O_3と考えられ、耐酸化性に優れている。過去の研究よりTiAlの溶融塩ホウ化処理においてTiB_2下層にAl_3Ti層が存在することが判っているので、Al_2O_3はこのAl_3Ti層が酸化することによって形成したと考えられる。次年度はこれらについて詳細な検討を行う。
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