研究概要 |
1.多孔質高分子ゲルの作製条件の膨潤・収縮速度への影響 N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)や、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)のモノマー水溶液を、それぞれポリマーの転移温度(約30℃)以上の所定の温度で重合し、感熱性の多孔質ゲルを合成した結果、これらのゲルが、合成温度が高い程、あるいは架橋剤濃度が高い程高速で膨潤・収縮することが明らかになった。特にDEAAゲルの場合は、合成温度が37℃をこえると、NIPAゲルの場合は、25℃をこえると膨潤速度が著しく大きくなることが明らかになった。電子顕微鏡を用いたゲルの内部構造の観察より、これらの温度を境に、急速にゲルの多孔質構造が発達していることが見い出された。 2.溶質排除法による細孔径分布の測定ならびに合成温度の内部構造への影響 溶質に分子量の異なるポリエチレングリコール分子とポリスチレン系ラテックス粒子を用いて、合成温度の異なるDEAAゲルの内部細孔径の分布を0〜1000nmの範囲で測定した。細孔径の分布は合成温度によって異なり、特に孔径100nm以上の細孔の体積割合が、合成温度が30℃と40℃の間で大きく増加していることが明らかになった。しかし、40℃以上に合成温度を上げても細孔径分布は大きく変化せず、高温で合成したゲルの細孔は、主にポリマーネットワークからなる孔径50nm以下の細孔と、相分離によって形成される孔径1000nm以上の細孔の2種類から構成されていることが明らかになった。 3.内部構造の膨潤・収縮速度への影響評価 感熱性多孔質ゲルの膨潤・収縮速度は、その内部構造に大きく影響を受け、孔径100nm以上の細孔の体積割合が多くなる程大きくなることが明らかになった。さらに、十分に多孔質化したゲルの膨潤速度は、ゲル内部に膨潤度の分布が生じないため、均質なゲルと同様に平衡径の2乗に反比例することが示された。
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