粒子の粒度分布は様々な手法によって測定されており、様々な方法を利用した測定装置が高値に市販されている。これら装置は、測定時間が短く再現性が高いといった長所を有する反面、複雑な演算処理を行うために内部がブラックボックス化されている。 一方、重力沈降による沈降天秤法は、ストークス径を測定するので物理的意味が明瞭な粒度情報が得られる。しかし、微小な粒子の粒度情報を得るには長い測定時間が必要となるという短所を有している。また、既存のデータ処理法では測定誤差を生じやすいという問題点もある。 そこで、粒度分布測定のデータ処理に非線形反復法を利用することで算出精度の向上並びに測定時間の短縮が可能であるかを検討した。その結果、完全な沈降曲線から粒度分布を算出する場合、収束計算に使用する応答関数の指数は0.7〜2が適当であることが分かった。一方、測定時間を短縮する場合、指数を0.3以下とすることで算出精度を向上できる場合があることが分かった。また、単峰性分布の場合、中位径程度の粒子が完全沈降するのに要する時間を測定時間として確保すれば、実用上十分な粒度分布が得られることが明らかとなった。 さらに、沈降天秤式粒度分布測定機の粒子懸濁液供給部を自動化し、検出皿の側壁高さを高くする改良を行った結果、より誤差の少ない沈降曲線が得られるようになった。また、検出される質量変化と理論沈降量の比は1〜1.02で一定となった。 検出皿底面の厚みが沈降距離に及ぼす影響についても理論及び実験から検討を行っ結果、検出皿底面の厚みは検出される質量変化に影響を与えないことが明らかとなった。 上述の知見を基に粒度分布を測定した結果、既存の測定装置による測定結果と同等の粒度分布が得られた。さらに、測定時間を短縮した場合も実用上問題ない程度の差違しか認められなかった。
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