研究概要 |
本年度は、現有の擬定常状態に基づく拡散係数測定装置を用いて、超臨界二酸化炭素中のナフタレンの拡散係数を温度318.2Kで測定した。その結果、308.2Kでの測定結果に見られたような二酸化炭素の臨界圧力付近での拡散係数の減少は観測されず、この温度(318.2K)での拡散係数は圧力の増加に対して単調に減少するという結果が得られた。また、これら2つの温度での実測値を他の文献値と比較し、測定法などを検討した結果、超臨界二酸化炭素中での拡散係数のばらつきは、溶質濃度の影響による可能性が高いと考えられた。 さらに、超臨界二酸化炭素中でのナフタレンの拡散係数を相関するために、無限希釈状態に対して推奨されているSchmidt数による相関式および有限濃度に対して提案されているDarkenの式を用い、これら相関式の適用性について考察を行った。その結果、無限希釈状態での計算結果は、厳密な無限希釈状態のもとで測定を行ったと明記されていたAkgermanらの文献値(Ind.Eng.Chem.Res.,35,911(1996))と良好に一致し、それ以外の文献値および本研究で得られた実測値よりも高い値を示した。これに対し有限濃度での相関式(Darken式)を用いると、超臨界二酸化炭素中のナフタレンの飽和溶解度が10^<-3>のオーダーであるにも関わらず、拡散係数の計算結果は溶質濃度によって大きく変化することが確認された。さらに、式中の熱力学因子の計算に3次状態方程式および溶解度データに対して最適化された異種分子間相互作用パラメータを用い、ナフタレンのモル分率を飽和溶解度の1/2と近似することにより、各温度での実測値および308.2Kにおける臨界点近傍での拡散係数の減少を定量的に相関できることが示された。
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