無機鉱物を粉砕すると、粒子径・比表面積などの変化の他、原料粉の無定形化などが起こり、それに基づき粉体の物理化学的性質が変化し(メカノケミカル効果)、その後の反応性(セラミックス合成の場合は焼結性)に影響を及ぼすものと推定される。本研究では、メカノケミカル効果と粒子径(比表面積)の影響を同時に評価し、その両者が、焼結体微構造および焼結体の特性にどのように影響を及ぼすかを実験的に検討した。また、焼結性に及ぼす、原料粉への種添加の影響も検討してみた。今までは、ムライトセラミックスとアルミナセラミックスの合成を試み、以下のような途中結果を得た。 1. ムライトセラミックス合成の場合 カリナイトと水酸化アルミニウムを原料としムライトセラミックスを合成した。その結果、 (1) 水酸化アルミニウム原料粉の粒子径は細かな方が、焼結性に有利であった。 (2) 原料粉の無定形化と焼結体の特性を調べた結果、無定形化だけでは効果が小さく、無定形化と均一混合が組み合わされた粉砕方法が望ましいことが分かった。乾式混合粉砕を行うことによって、無定形化と均一混合の両者の効果が期待できた。 2. アルミナセラミック合成の場合 原料の水酸化アルミニウムに種粒子としてαアルミナを加え、乾式混合粉砕を施し、粉砕産物の加熱過程でのαアルミナヘ相変化する温度(α化温度)について調べてみた。その結果、 (1) 水酸化アルミニウム単独での加熱によるα化温度は約1300℃であるが、種粒子としてαアルミナを添加し粉砕操作を施すとα化温度が低減した。 (2) 添加するαアルミナは微粒の方が効果があり、また、粉砕操作において、原料を無定形化させるとα化温度は著しく低減(約900℃)した。
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