本研究は、アンモニアの処理技術として超臨界水酸化反応を利用した新規プロセスの可能性について検討することを目的としている。本年度の実績として、まず流通式反応装置を作製し、生成物の定性、定量分析システムを確立した。実験は、均一系酸素酸化反応と、固体触媒を用いた不均一系酸化反応について行った。均一系の場合、500℃以下の温度(滞留時間30秒程度)では、アンモニアの分解は起こらないことを実験的に確認した。この実験事実を機構論的に説明するために、気相の反応モデルをベースとしたシミュレーション計算によって、各温度におけるアンモニアの分解率を検証した。その結果、有意な反応率を得るためには700℃以上の高温が必要であり、低温ではラジカル連鎖を維持するために十分な濃度のラジカルが得られないため、反応率が低く抑えられる可能性が示唆された。このような高温は安全性や経済性などの観点から実用的な条件ではないと考え、次に、固体触媒を導入して系の低温化をはかる可能性について検討した。触媒として二酸化マンガンを用い、アンモニア分解率の条件依存性について調べたところ、例えば24.6MPa、470℃、接触時間0.2s・cm^3-cat/cm^3においてアンモニア分解率は約30%に達した。計算によると、均一系の反応では約800℃の高温でなければ同様の反応率が得られず、触媒の導入によって低温化が可能になることが明らかになった。また、アンモニアの窒素原子に由来する生成物は、大部分が窒素分子であり、窒素酸化物の生成は極めて少ないことを確認した。二酸化マンガンによるアンモニアの酸化分解の総括反応速度式を求めたところ、分解速度はアンモニア濃度の1次、酸素濃度の0.7次、水密度の-1次にそれぞれ比例することが明らかになった。水の密度が反応速度に負の影響を持つことから、水による吸着阻害の可能性が示唆された。
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