申請者はゲルの微細構造を化学的手段によって固体ヘと転化することが出来れば分離機能性材料・触媒などに応用できる魅力的な多孔材料を創製出来ると考えた。界面活性剤の分子集合体が形成するゲルにシリコンなどの金属アルコキシドを導入し、自発的に進行する加水分解・縮合重合反応・凝集更には乾燥工程・熱処理によって多孔質材料を得ることができた。それらの材料の多孔構造は反応開始前に指定する界面活性剤の濃度によって影響を受けることが明らかになった。現象論的には界面活性剤濃度が上昇するにつれて多孔構造がより微細化する。当初これは界面活性剤濃度上昇に伴なうゲルネットワーク構造の微細化が直接に凝集、乾燥或いは焼成過程に影響するためと考えられたが、構造形成過程を静的光散乱・動的光散乱によって時系列で追跡したところ、界面活性剤ゲルのネットワーク構造は多孔構造の前駆体構造としての微粒子の径を決定する因子であることが判った。自発形成する金属酸化物微粒子は初期段階ではゲルネットワーク構造による幾何学的拘束をそれ程受けないため衝突を繰り返して成長するが、今回実験的に検討した系では反応開始後約200時間ほどで成長を停止する。この最終粒子径はゲルのネットワーク構造の網目のサイズに関連していると考えられ、網目構造が微粒子の成長に必要な並進運動を幾何学的にブロックする為にある時点で微粒子の成長が停止するとの物理化学的描像を提案した。この知見はゲル構造が静的に転化される固体構造の形態に影響するのではなく、動的側面においてメソポーラス分子鋳型として機能することを示している。
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