本研究ではゲルの微細なネットワーク構造を固体へ転化する方法により、分離機能性材料の創製法に寄与することを企図した。この基礎段階として主として以下の二点に関して、本研究助成の協力を得、知見を得た。 (1)ゲルの固体転化の際に、ゲル母体中での物質移動の移動度(拡散の時定数)を予め把握しておくことは、固体転化のレゾルーションを決定する重要な物理的因子である。ゲル中での物質の自己拡散係数の決定因子は従来殆ど検討されたことがなかったが、ゲル膜内透過実験・ゲル構造観察・ブラウニアンダイナミクス法による計算機実験を平行して行うことにより、ゲル中での自己拡散係数を決定する要因としてゲルのメッシュによる立体障害効果と、ゲル内に存在する電気的チャージによる引力的相互作用の存在を指摘し、更にそれらの間の量的関係を単純なゲルの立法格子モデルを用いて予測した。 (2)稀薄領域ではゾル構造をとり、乾燥が進行するに連れてゲル化が進行するような系に、金属アルコキシドを導入し、自発的に形成されるゲルの秩序相構造をテンプレートとして、分子レベルでの分離機能性材料として期待が大きい、無機金属酸化物性ナノポーラス材料を創製することに成功した。従来注目されてこなかったゲル化速度とアルコキシドの加水分解の反応速度の相互相関が構造形成上の有利・不利にどのように影響を与えるかを、乾燥速度や水の転化条件の変化によって明らかにした。その結果、乾燥過程を出来るだけ低温で行い、更に低水含有率で反応を起こすことが重要であることが明らかになった。高温は分子集団であるゲルの形成上不利であり、また、過剰の水はゲル構造の過剰の膨潤を誘引するからである。
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