本研究では、熱誘起相分離法と超臨界流体誘起相分離法のハイブリッド化により、新規な多孔構造膜の創製を目指している。本年度は熱誘起相分離法と超臨界流体誘起相分離法の個々の手法による多孔膜の形成について検討を行った。 熱誘起相分離法では、高分子/溶媒の溶融溶液の一方からのみ溶媒を蒸発させ、溶液内に高分子濃度勾配を形成させた後、相分離を誘起させることで非対称性多孔膜が作製できることを明らかとした。また、冷却速度や冷却温度という冷却条件の影響を検討した。冷却温度が減少するほど冷却速度が増加するため、膜底面での孔径は減少した。一方、冷却温度が高く、膜溶液の上面がbiodal線の外側にある条件下では膜の上面にskin層が形成された。このような高分子濃度勾配に加え、膜両面での冷却速度差を形成させた場合には、膜の上面にskin層を持つ明確な非対称性構造が得られた。さらに、エチレンとアクリル酸(Zn塩)のコポリマーを用い、熱誘起相分離法とdryプロセスのハイブリッド化により、親水性の非対称性膜の作製についても検討を行った。 超臨界流体誘起相分離では、高分子としてポリメチルメタクリレート、ポリスチレンを用い、超臨界流体には二酸化炭素を用いることで、多孔構造膜の作製を行った。高分子を高温セル内に仕込んだ後、高圧ポンプを用いて二酸化炭素を高圧セルに注入し、高分子と二酸化炭素を接触させた。その後高圧セル内を任意の温度、圧力に設定した。一定時間後、急激にセル内を減圧することにより作製した高分子多孔体を回収した。基本的な操作条件は、圧力15MPa、温度318.2Kである。得られた高分子多孔体は、直径30μm程度の均一な細孔を有していることがわかった。また超臨界二酸化炭素との接触時間を長くすることにより、高分子多孔構造体の細孔径が小さくなることが明らかとなった。
|