研究概要 |
逆ミセルへのタンパク質の抽出に及ぼす水相添加塩の効果について、逆ミセル中の微水環境の性質およびそこに抽出されたタンパク質の可溶化状態の観点から検討した。 界面活性剤AOTの対イオンをNa^+から他のアルカリあるいはアルカリ土類金属イオンに置換したM(AOT)_n(Mは金属イオン)からなる逆ミセル溶液を、イオン交換法によって調製した。これに適量の水を添加することで逆ミセル径を制御する。逆ミセル内の微小水相の性質は、その粘性および極性を水溶性ラベル剤3-カルバモイルプロキシルを添加することによってESRを用いて調べた。対イオン種としてNa^+のもの及びLi^+,K^+,Rb^+,Cs^+,Ca^<2+>,Sr^<2+>,Ba^<2+>に置換したものを比較したが、l価イオンと2価イオンの間には差がみられたが、同じ価数のものは有意差がみられなかった。すなわち、極性はl価イオン置換の方がわずかに高く、粘性は2価イオンの方が高かった。 続いて、種々のM(AOT)_n逆ミセル溶液とタンパク質水溶液との二相接触法によってタンパク質の可溶化を行い、そのCDスペクトルを検討した。タンパク質としてリゾチーム、リボヌクレアーゼA、シトクロムcを用い、対イオン種としてNa^+のもの及びK^+,Ca^<2+>,Ba^<2+>に置換したものを比較したが、イオン種によるCDスペクトルの違いは観測されなかった。 これらの結果は、逆ミセルによるタンパク質の抽出において添加塩は逆ミセル微小水相およびタンパク質コンフォメーションにほとんど影響しないことを示唆する。すなわち、添加塩の効果はタンパク質と逆ミセルとの静電的相互作用に帰することがわかった。
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