研究概要 |
ヘテロポリ酸塩の一種である12タングストリン酸のアンモニウム塩は、6-10nm程度の大きさのナノ結晶子が結晶方位をそろえて自己組織化集合したミクロ多孔体を形成する。本研究では、これらの生成過程の検討、化学的還元により電子をドープすることによる物性変化、界面活性剤や溶媒,アニオンの電荷制御による集合体構造の変化を検討した.。ナノ結晶子集合体をn-BuLiで還元すると、55K付近にスピングラス的な転移を示す部分が存在することがわかった。ナノ結晶子が規則配列して互いにエピタキシャルに連結し、かつミクロ孔が網目状にランダムに単結晶内に存在するため、フラストレーションを含んだスピン間相互作用が現れたと推定した。界面活性剤集合体を添加した合成では,界面活性剤のミセルの周囲に結晶子が集合したと思われる棒状集合体が一部に生成し,結晶子の配列制御の可能性が示唆された.一方,アニオンの電荷を-3から、-4に変えるため12タングストケイ酸のアンモニウム塩(NH_4)_4SiW_<12>O_<40>を合成したところ,単結晶からアニオンが欠落して細孔ができた,「結晶性ミクロ多孔体」が生成した.空隙率は0.5にも達し,単結晶中からヘテロポリアニオンが半分も欠落して多孔体となっている.これは,細孔のない結晶性物質から細孔が生成する新規な細孔生成メカニズムである.この多孔体は水溶性であるため,溶液の塗布乾燥により容易に薄膜化できる.ガス分離膜などへの応用が期待される.
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