申請者らは珪酸エチル(TEOS)蒸気を気相中に導入することにより(in-situ調製)、反応器中で調製された固体シリカ種が400℃以下の比較的低温でn-ブタン酸化反応に活性を示すことを見いだした。本研究では(1)シリカの触媒としての利用の可能性と、(2)低温でのラジカル的酸化反応機構の解明、という2つの観点から研究を進めた。本反応系は全く新規な触媒系であるため、平成10年度は現象論の整理として、(1)反応条件の影響と、(2)シリカ種調製条件の影響、について検討した。 (1)反応条件の影響:ブタン酸化活性は反応温度に対して山形の特異的な挙動を示した。また、全温度域にわたってアルデヒド、ブテン、CO、CO_2が多く生成した。この2つの挙動はcool flameと言われる現象と類似であることが示された。本反応系は気相のラジカルが関与し、シリカ種は気相ラジカルのinitiatorとして働いていることが示唆された。 (2)シリカ種調製条件の影響:シリカ種の調製に種々のガスを用いた。ブタンと酸素が共存する場合にのみ、酸化反応が進行した。これはシリカ種調製にはブタン酸化生成物が関与することを示唆している。水蒸気とTEOSを同時導入したところ、先のin-situ調製の場合と同様な現象が見られた。TEOSの加水分解により生成したシリカ、かつ表面が高度に水和された状態が不可欠であることが示唆された。 平成11年度は本年度の知見を元に反応機構について検討する予定である。
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