これまでに、減圧残渣(VR)中の金属化合物の賦存状態・構造の把握、金属化合物含有アスファルテンからの脱メタル法の探索、及びVR中アスファルテンの低温水素化改質による脱メタル及び水素化分解反応の促進に関する研究を進め、炭素微粒子(Ketjen Black)担持NiMo触媒(NiMo/KB)を用いる低温(340℃前後)水素化処理により、アスファルテン成分(HI)をほぼ完全にマルテン成分(HS)に転化でき、特に金属化合物を含有するアスファルテン成分がより選択的に軽質化されることを示した。また、VR中のアスファルテン、ならびに水素化処理によってアスファルテンから生成した極性マルテン成分からの選択的な低温脱メタルを企図し、超音波照射下でVRアスファルテンのイオン交換樹脂による吸着処理を行い、大部分のアスファルテンをヘキサン可溶分に転換できることを示した。さらに、VRフラクションのステップスキャンモードXRDプロファイルを測定し、各成分の凝集構造解析を行った。紐及び極性成分は、芳香環積層構造に由来する26゚付近にブロードなピークを与え、芳香族成分と飽和成分は、アルキル鎖の絡み合い構造に基づく20゚付近にややシャープなピークを示した。VR及びHIの加熱ステージでのXRD測定を行ったところ、前者では200℃前後までの加熱により26゚付近のショルダーピークが消失し、全体のブロードなピークも低角側ヘシフトしたのに対して、組では300℃までの加熱で同様な傾向は見られたものの、300℃においても依然として26゚付近のショルダーピークが残存していた。これは、VR中のHS成分がHI成分の凝集構造緩和に対して重要な溶媒作用を示していることを示唆している。また、VRに炭素微粒子区均を添加し、60℃で1時間加熱撹拌処理して、THF、ヘキサンにて洗浄、分別を行ったところ、KBがHI中の強極性成分(heavy asphaltene)を選択的に吸着していることが示された。現在、メソポーラス炭素担体の探索とその担持水素化触媒ならびに触媒反応の設計を進めている。
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