アラビア系減圧残渣和(VR)およびその成分の加熱下、溶媒和、吸着状態、あるいは水素化後の低速スキャンXRD測定を、温度可変・水平型X線回折装置を用いて行った。VR類は、脂肪族に由来する20°付近のブロードなピークと22°、24°のシャープなピーク、ならびに26°付近の芳香族に由来するピークが重なって観測された。これらの回折項は、モデル化合物との対比から、それぞれアルキルベンゼン類の凝集および芳香環の積層に帰属されると推定される。後者のピークは、VR中のレジン成分やアスファルテン分に特徴的である。300℃までの加熱あるいはトルエン添加による溶媒和によって、このピークは減少し、脂肪族由来ピークが低角側へシフトした。一方、炭素微粒子(Ketjen Black:KB)上に吸着された重質成分(THF 不溶分)は、芳香族由来ピークのみを示し、芳香環の積層によって溶解度が低下したことが示された。また、NiMo/KBあるいは市販のNiMo/Al_2O_3触媒を用いる400℃以下の反応温度における水素化処理では、アスファルテン分含量が低下し、マルテン成分への転換が進行したが、420℃では逆に芳香族性の高いアスファルテン分が増加した。これらの結果から、レジン、アスファルテン中の金属除去、高分子分解の促進、炭素析出の抑制には、これらの成分中の芳香族積層の徹底緩和の必要性が示唆された。溶媒和と水素化の徹底のためには、適当な溶媒設計とアスファルテンミセル中に浸透でき、かつメソポアを有する炭素微粒子触媒の設計が有効であろう。
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