研究概要 |
形成外科領域では,ヒトの皮膚,軟骨,骨等の組織内にある細胞を分離し,in vitroで培養および組織の再構成をおこなった後,患者に移植する形成治療技術が開発されてきた.特に,火傷患者に対して皮膚組織の角化細胞を培養して,培養皮膚(スキングラフト,表皮細胞をin vitroで皮膚組織に再構成したもの)を生産・移植する際,培養工程がもっとも重要となってくる.しかし,培養工学的検討に関しての報告はほとんど存在せず,表皮細胞の増殖速度論的解析,培養方法の最適化が望まれている.本申請課題では,フィーダーレイヤーを用いずヒト角化細胞を最適に培養する方法を確立するため,本年度は以下の検討を行った. まず,培地組成,細胞付着面の改善,培地量,接種量等の基礎的培養条件について検討し,速度論的解析を行った.MCDB153培地,または199培地をベースとした無血清培地が,角化細胞の培養に優れている事を見出した.培養容器としては,親水性テフロン膜床を有するディッシュが細胞接種後の接着を短時間に行わせ,ラグタイムを短縮し,その結果,増殖が無処理の培養容器に比べ向上する事が分った.得られた結果を,増殖モデルにて速度論的解析を行い,速度論的に解析し,平面増殖モデルを構築した. 細胞増殖形態をより詳細に観察した結果,細胞は培養中ほぼ一定の大きさで増殖するため,コンフルエンス(培養容器底面の細胞占有率)と細胞数の直線相関が確認された.そこで,CCDカメラを付設した光学顕微鏡にて,画像処理技術を用い,細胞濃度のオンラインモニタリングシステムを確立した.さらに,培養中のコロニー形成率に対する容器内位置的分布および容器形状について検討を行なったところ,培養底面が円形である容器はコロニーが比較的センターに集まりやすい事が分り,培養容器中の均一なコロニー分散を実現するためには,角型容器の使用が望ましい事が分った.
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