研究概要 |
1. これまでの通性嫌気性細菌Enterobacter aerogenes変異株の解析から,細胞内で還元力が余剰となった時に通常利用されないNADHを利用した水素生成が起きることが示唆されたので,変異株細胞抽出液にNADHまたはNADPHを添加したところ明らかな水素生産が見られた.また,変異株細胞内NADH濃度は野生株より高く,NADH/NAD^+比率は野生株の約2倍になっていた.そこで,更なる水素高生産株を育種するためにNADHを再酸化する乳酸脱水素酵素の破壊を目的として本酵素の解析を行った.本菌は主にD-乳酸を生産していたので,細胞抽出液のNative-PAGEを行った後D-乳酸を基質として活性染色を行ったところ数本の活性バンドが検出された.そこで現在,主要バンドについて精製を行っている. 2. 以前の検討で,E. aerogenesの自己凝集性を利用した固定床型リアクターを用い連続培養を行ったところ,高速水素生産が達成されたので,さらに水素生産に最適なリアクター形状の探索を進めた.まず,リアクター内培養液組成を一定とするため,液循環による流動床型リアクターを作製しpH6.3として培養を行ったが,著量の凝集菌体が系外に排出されてしまった.凝集菌体の性状はpHにより大きく変動することが知られているので,様々なpHを試したところ,pH5.6にて凝集菌体がリアクター内に良好に維持された.そこで,pH5.6で空塔速度を変え培養を行ったところ,2ヶ月以上の長期連続水素生産が可能であることがわかった.しかし,空塔速度を上げるとやはり水素生産速度が下がる傾向が見られたので酸化還元電位(ORP)を測定したところ水素生産に不適当なほどに上昇していた.そこで,還元剤を用いて供給液ORPを下げたところ,水素生産速度の向上が見られ,高い空塔速度で操作する場合,培地の前処理が重要であると思われた.
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