昨年度の検討結果から、試作した光熱変換法による単一ミクロ液滴分析装置において、励起光とプローブ光を直交させて液滴に入射する配置で信号を取得できることが分かった。今年度は単一ミクロ液滴のin-situ定量に応用するために、この測定条件でまず信号の励起光強度依存性、試料濃度依存性、変調周波数依存性などの基礎的検討を行った。信号強度は励起光強度に比例したところから、得られた信号は液滴の光吸収に基づく光熱変換信号であることが確認された。また、信号強度は液滴中の吸収化学種の濃度に比例したことから、本法により液滴中微量化学種の定量分析が可能であることが分かった(例えば、鉄(II)-フェナントロリン錯体10^<-5>mol/lの1μl液滴で測定可能)。ただ、固体試料とは異なり対流などの液体特有の不安定性は避けられず、これが測定結果に大きく影響するので注意を要する。一方、変調周波数依存性はf^<-1〜-2>依存性を示し、微小球からの光熱変換信号として解析することができた。以上のことから、まだ改善の余地はあるもののμlオーダの微小液滴を定量可能であることが分かった。そこで次に、これを液滴界面での物質移動のモニタリングに応用した。例えば、ローダミンBのトルエンへの拡散は1時間以上の間に渡って観測された。これにより液滴界面での物質移動を半定量的ではあるが測定することが可能であると言える。さらに定量的な議論するためには、液滴の形状・状態などの経時変化が信号強度に大きく影響を与えるため、液滴形状・状態なども同時にモニタリングするなどの手段が必要であり、これが今後の課題である。
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