平成10年度は以下の3項目について検討を行った。 1) ヨウ素修飾白金単結晶電極上にアンダーポテンシャルポジション(UPD)した銅原子の吸着構造解析 Pt(111)面上に吸着したヨウ素原子は、吸着条件を制御することによって(3×3)構造あるいは(√7×√7)R19.1゚構造を形成させることができる。これらの構造でヨウ素が吸着した基板上に銅原子をUPDさせて、銅の吸着構造を解析した。 銅原子は、ヨウ素がいずれの構造で吸着した場合も、Pt(111)面上に(1×1)構造でUPDした。また、銅がUPDすることによって、最上層のヨウ素の吸着構造はc(p×3)構造へと変化した。Cu(111)面上にヨウ素を吸着させると、(√3×√3)R30゚構造を形成することから、Pt(111)基板上に一層吸着した銅原子の(1×1)構造はバルクのCu(111)面とは異なる性質を有することが示された。 2) ヨウ素修飾Pt(100)上でのポルフィリンの吸着構造 Pt(100)面上に吸着したヨウ素は二回対称の(√2×5√2)構造を形成する。この基板を、水溶性ポルフィリン(TMPyP)を含む過塩素酸水溶液に浸漬したところ、TMPyPの単分子膜が形成された。TMPyPはヨウ素原子が並んでいる<100>方向と平行に配列していることがSTM測定によって明らかになった。この結果は、有機分子の吸着構造が、基板の原子配列に影響されることを示唆している。 3) Ru修飾白金単結晶電極上での、メタノールの酸化 白金単結晶の基本的低指数面に、ルテニウムを1原子層以下で電解析出させた電極を用いてメタノールの酸化反応を検討した。その結果、ルテニウム修飾Pt(100)面において最も大きな酸化電流が測定された。この結果は、基板表面の原子配列がメタノールの酸化反応の活性に大きく影響を及ぼすことを示唆している。
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