1. 静電噴霧法によるニッケル酸リチウム系薄膜の作製 ニッケル酸リチウム薄膜を静電噴霧法により作製するにあたり、前駆体溶液の噴霧条件や焼成条件の最適化を行った。結晶学的に層構造を有する六方晶系のニッケル酸リチウムを作製するためには、熱処理によるリチウムの散逸を最小にしつつ、固相中のニッケルを+3価に酸化する焼成条件を選ぶ必要があった。その条件が、酸素ガス雰囲気下、700度であることを明らかにした。この反応温度はバルク試料を作製する場合に比べ低いことも分かった。 2. ニッケル酸リチウム系薄膜の評価 得られた薄膜試料について、薄膜X線回折による相同定、電子顕微鏡による形状観察、固体表面形状測定器による平均膜厚の測定を行った。その結果、六方晶系のニッケル酸リチウムが単相で生成していることが分かり、その結晶学的パラメータを決定した。得られた薄膜は見た目には平滑であるが、電子顕微鏡観察から多孔性の多結晶体であることが分かった。また、生成物は多孔性であるものの、膜厚が前駆体溶液の噴霧時間におおむね比例したことから、噴霧時間を変えることにより膜厚を制御できることを明らかにした。 3. 電気化学測定と結晶構造変化の観察 リチウムイオンを含む有機溶媒中で電気化学測定を行い、本研究で作製したニッケル酸リチウム中へ、リチウムが電気化学的にインターカレーション ・脱インターカレーションすることを確認した。また、ニッケル酸リチウムの結晶構造は反応前後でともに六方晶系であるが、格子定数が変化し、単位格子の体積変化は約2%であることを明らかにした。また、ニッケル酸リチウムの電気化学的活性は大気中の水分に極めて敏感で、試料の保管、取り扱いには充分な配慮が必要なことが分かった。
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