閉鎖循環系を用いたアルゴンガス中の水蒸気の電気化学的除湿について検討を行った。電解質にはSrCeO_3系プロトン導電性酸化物を用いた。この実験では、試験ガスを繰り返し除湿セルに送り込むことにより限界まで除湿が行われるため、用いた電解質の除湿能力が調べられる。昨年度の研究から適当と判断された、作動温度700℃において試験を行った結果、初期水蒸気分圧0.20Torrのガスを約0.05Torr(露点約-45℃)まで乾燥することができた。しかしながら、通電を続けてもそれ以上に水蒸気分圧が下がることはなかった。このような電気化学的除湿は、ガス中の水蒸気から水素をプロトンの形態で引き抜くことを原理としている。水蒸気分圧が0.05Torr以下に下がらないことは、この条件において電流がすべて電子により運ばれている、すなわち、電流効率がゼロとなることを意味する。 このように電解質にプロトン導電性がなくなり電子のみが流れるようになる条件を明らかにするために、アノード(陽極、試験ガス側)およびカソード(対極)における水蒸気の効果を検討した。アノードガスには酸素分圧変化へのバッファーとしてアルゴンの代わりに水素をキャリアガスに用いた。その結果、カソードにおける水蒸気分圧が高いほど、電子導電が抑えられ電流効率が高くなることがわかった。したがって、電流効率を上げるためには、カソードを湿潤雰囲気にすることが効果的であることがわかった。 以上の研究を通じ、プロトン導電体を用いた電気化学的除湿が可能であり、最適な条件下では露点で約-45℃の非常に乾燥したガスを調製できることが明らかになった。除湿能の点では低温作動が、電力効率の点では高温が有利であった。また、カソード(対極)を湿潤させることにより電流効率が増大する可能性を示した。
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