スピネル構造を持つLiMn_2O_4は安価で毒性も低く次世代のリチウム二次電池の正極材料として注目されている。しかし、充放電とともに充放電容量が減少するという大きな問題点がある。本研究では、LiMn_2O_4の薄膜をレーザーアブレーション法で形成し、その電気化学的リチウム脱離挿入特性を明らかにするとともに、電気化学走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、電気化学的にリチウム脱離挿入させた時の原子レベルでの形態変化を観察し、その劣化機構を明らかにすることを目的とした。昨年度はレーザーアブレーション法によりほぼ定比組成(Li/Mn=0.51)の薄膜を作製し、1MLiClO_4を電解質として含むエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶液中での充放電サイクル前後での表面形態変化をSTMでその場観察し、20サイクル以降から薄膜表面に100nm程度の微小粒子が出現することを明らかにした。 この微小粒子は溶液中から析出して生成したと考えられ、容量低下の原因として単なるマンガンイオンの溶出だけでなく、溶出したマンガンイオンの再析出反応を考慮する必要があることが示唆された。そこで本年度は、より大きな容量低下が認められるLiPF_6を電解質とした溶液中での同様の測定を行った。その結果、微小粒子の生成が認められたが、その形態から溶液中から析出したものではなく溶解によって粒界等の結晶性の低い部分の溶解のために微粉化が起こるものと推察された。電解質塩による形態変化の違いは、フッ素イオン存在下での大きなMnイオンの溶解度が原因であると考えられる。また、容量低下が少ないリチウム過剰組成(Li/Mn=0.52)の薄膜を作製し、LiClO_4を電解質として含む溶液中で観察したところ表面形態にほとんど変化が見られず、定比組成で見られた形態変化が容量低下の原因であることが確かめられた。
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