研究概要 |
量子サイズ効果を示す半導体ナノ粒子を規則的に配列させることにより,ナノ粒子間に電気的な相互作用が生じ,個々の半導体ナノ粒子とは極めて異なった光電気化学特性が発現すると期待されている。本研究では,DNA二重鎖を一次元のマトリクスとして用い,これに硫化カドミウムナノ粒子を固定することにより,一次元CdSナノ粒子アレイ(CdSアレイ/DNA)の調製を試み,その特性を評価した。 CdSナノ粒子表面をカチオン性のチオール化合物で化学修飾することにより,粒子表面に正電荷を有するCdSナノ粒子を調製した。得られたCdSナノ粒子の平均粒径および標準偏差は各々3.0nmおよび0.20nmであり,単分散に近いものであった。このCdSナノ粒子を負電荷を有するDNAと作用させることにより,静電的にCdSナノ粒子をDNAに結合させた。この試料の透過型電子顕微鏡(TEM)観察から,数十ナノメートルにわたりCdSナノ粒子がDNA鎖に沿って1次元に配列している様子が観察され,一次元CdSナノ粒子アレイ(CdSアレイ/DNA)が形成されていることが確認された。得られたTEM写真からCdSナノ粒子どうしの中心間距離を測定したところ,平均のナノ粒子中心間距離は3.5nm(標準偏差0,52nm)と求められ,CdSナノ粒子が非常に密な状態でDNA鎖上に固定されていることが確認できた。これらのことから正電荷を粒子表面に有するCdSナノ粒子と負電荷を有するDNAとを静電的に相互作用させることによって,DNA二重鎖に沿った比較的堅牢な一次元構造を有するCdSナノ粒子配列が容易に形成されることが分かった。さらに得られたCdSアレイ/DNAを電極上に固定し光電気化学特性を評価したところ,CdSナノ粒子に由来する光アノード電流が観察され,n型半導体電極類似の光応答を示すことが分かった。
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