研究概要 |
電気自動車など大型移動用電源に用いられるリチウム二次電池の正極活物質LiCoO_2,LiNiO_2およびLiMn_2O_4について,室温および300-400℃におけるリチウムイオン導電率を評価した。まず,室温におけるLi_<1-x>CoO_2のイオン導伝率を測定するためにLi_<1-x>CoO_2を用いたリチウム二次電池を作製し,様々な開回路電圧における交流インピーダンス特性を測定した。その結果,複素インピーダンスプロット上に2つの歪んだ半円弧と低周波数領域に直線領域が観察された。前者はリチウム負極と酸化物正極の表面でのリチウムイオンの脱挿入反応を示し,後者は酸化物正極中でのリチウムイオンの移動によるものである。この直線領域の解析の結果,Li_<0.86>CoO_2中のチリウムイオン導電率はおよそ9.89×10^<-6>S cm^<-1>であること,さらに酸化物中のリチウム量を減少させるとイオン導電率は増加する傾向を示すことが明かとなった。一方,LiCoO_2,LiNiO_2およびLiMn_2O_4の幅広い温度域におけるリチウムイオン導伝率を測定するために,リチウムイオン輸率がほぼ1であるペロブスカイト型酸化物La_<1-x>Li_xTiO_<3-δ>を電子ブロッキング電極として用い,その交流インピーダンス特性を評価した。その結果,LiCoO_2とLiNiO_2のリチウムイオン導電率は、400℃でおよそ2.5×10^<-4>Scm^<-1>であった。一方、LiMn_2O_4のリチウムイオン導電率は400℃でおよそ5.0×10^<-5>S cm^<-1>であり、LiCoO_2とLiNiO_2と比較すると1オーダー低くなった。これは、LiCoO_2とLiNiO_2は層状岩塩構造であるのに対しLiMn_2O_4はスピネル構造であるという結晶構造の違いが影響しているものと考えられる。
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