本研究では、水素吸蔵材料の開発を進めるための新規水素吸蔵材料の創成を目的として、インターカレーション化合物を作製し、反応条件の最適化を行うとともに、作製した材料の構造ならびに水素吸蔵量特性を検討した。得られた結果をまとめると次のようになる。 1. CrO_3とグラファイト(粉末とシート)を出発原料とし、溶液法でCrO_3-GIC、気体法でFeCl_3-GICを作製した。溶液法の場合には反応温度が45°C、反応時間を3日間とすると純度の高いCrO_3-GICが得られた。カーボン原料として、グラファイトシ一トを用いた時に、インターカレーション反応が十分に進行できず、粉末グラファイトはこの反応に適することが明らかになった。 2. XRD測定の結果より、作製したCrO_3-GIC及びFeCl_3-GICともはグラファイトより大きなd値を持ち、インターカレーション反応によりグラファイトの層間距離は広がったことが分かった。気相-固相系に於ける水素の吸蔵特性を調べたところ、室温で水素圧は3MPaの時に、作製したCrO_3-GICが約0.022wt.%の水素、FeCl_3-GICは0.01wt.%の水素を吸蔵することが見出された。また、77Kで水素吸蔵量が増大し、室温の場合の倍近くの吸蔵量になることが分かった。
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