界面活性剤が形成する分子集合体を鋳型とした多孔質セラミックスの合成について検討を行った。 1. 酸化イットリウム系多孔体の合成 尿素を用いる均一沈殿法により、層状及びヘキサゴナル構造を有する酸化イットリウム/アルキル硫酸エステル塩メソ複合体の合成に成功した。界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いた場合、反応初期の段階では、界面活性剤の2分子層を酸化イットリウム層で挟んだ、層間距離4.0nmの層状構造複合体が生成した。そのSEM像では板状粒子が認められ、TEM像では層状構造が屈曲したり同心円状に成長した様子が観察された。一方、反応の進行に伴い、層状構造複合体は、界面活性剤の棒状ミセルが六方構造に配列した格子定数a=6.1nmのヘキサゴナル構造複合体に変換された。そのSEM像では円盤状の粒子が多数認められ、円盤状粒子の周縁部が発達して皿状や鍋状等の特異な成長をした様子が一部観察された。また、層状からヘキサゴナルへの構造変換に伴い、複合体のミクロ多孔体化が進展し、比表面積が約50m^2/gから約300m^2/gへと著しく増大することが明らかとなった。ヘキサゴナル構造複合体は、酢酸ナトリウム/エタノール溶液を用いた陰イオン交換処理により界面活性剤が除去され、格子定数a=6.2nm、細孔径3.0nm、545m^2/gの高比表面積を有するメソ多孔体に変換された。 2. 酸化イットリウムアルミニウム系多孔体の合成 ドデシル硫酸ナトリウムが形成する棒状ミセルを鋳型として、ヘキサゴナル構造を有する多孔質酸化イットリウムアルミニウムの合成に成功した。細孔径は1.6nmであり、662m^2/gという高比表面積を示した。現在、多孔体中のイットリウムとアルミニウムの比の制御や、細孔径の制御に関する検討を行っている。
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