本研究では低温・超高真空下において、超伝導体の清浄表面に電子ビーム蒸着により低被覆率で吸着させた4d、5d遷移金属原子を、STMを用いた原子操作の手法により並び換えて原子スケールの微細構造を人為的に作り出し、その近傍でトンネル電子分光を行い局所的な電子状態の変化を捉えることを目的としている。平成10年度はまずこの目的に用いる超高真空低温STM装置の製作・開発を再優先に行った。平成11年度も引き続き装置開発を進めており、現在も進行中である。 また、これと平行して平成10年度に設計した電子ビーム多元素蒸着システムを製作し、既存の超高真空STM装置に組み込んでテストを開始した。蒸着源を真空チャンバー内で容易に取り替えることが出来ることを確認し、パラジウム金属単結晶表面に4d遷移金属の蒸着を行い、低温超高真空下でのSTM観察を行った。それぞれの元素について、電子ビーム蒸着のフィラメント電流と加速電圧などと蒸着レートとの関係を明らかにし、最適化を行った。今後、開発を進めてきた超高真空低温STM装置にこのシステムを組み込んで、原子操作の実験を行っていく予定である。
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