これまで我々のグループが扱ってきた複核ルテニウムポリヒドリド錯体を均一系触媒として用い、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物を水素化する反応を検討した。 二核ルテニウムポリヒドリド錯体をベンゼンに溶かし大気圧〜50気圧、室温〜170℃の間のさまざまな条件で水素化を行なったところ、(1)50気圧、140℃の条件下ではそれほどTOF(Turn over frequency)は高くないが、還元体全体のうち部分水添生成物であるシクロヘキセンが25〜30%程度生成する条件を見つけることが出来た。(2)また、系内に酸素を添加して水素化を行なうと、TOFが200以上の効率で反応が進行し、シクロヘキサンのみを生成することが分かった。つぎに二核ポリヒドリド錯体を酸素添加条件下で数時間加熱したところ、数種類の錯体が生成していることがNMRによる分析でわかった。これらの混合物を触媒としてベンゼンを水素化すると、(2)と同様にシクロヘキサンを効率よく生成した。これらの混合物のうち、いくつかの成分はアルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで分離することができたので分離した成分を触媒として還元反応を検討したところ、かなり高い活性を持つ錯体が含まれていることが分かった。現在その成分の単離の検討と構造について解析をすすめている。また、シクロヘキセンを生成する部分水添反応についてはシクロヘキサンの生成を抑制すると共に触媒効率の向上を目指して研究を展開している。
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