既にハロゲン化アリールとトリエトキシシランの反応において適当なパラジウム触媒と塩基の存在下ケイ素原子がハロゲンを選択的に置換することを見いだしているが、本年度は本シリル化反応の適用範囲の拡張を目的とし、ハロゲン化アルケニルのシリル化について検討を行った。 その結果、ヨウ化アルケニル(1 mmol)とトリエトキシシラン(1.5 mmol)をジベンジリデンアセトンパラジウム(0.015 mmol)、酢酸カリウム(3 mmol)の存在下、メチルピロリドン(4 ml)中室温で2時間撹拌すると、目的のシリル化が進行し対応するアルケニルシランを立体選択的に与えることを見いだした。 ハロゲン化アルケニルのシリル化では炭素-炭素二重結合部分の還元が問題となり、先のヨウ化アリールを用いたときに最適であった三級アミンを塩基として用いるとアルキルシランが副生が顕著であった。反応条件について検討したところ、塩基として上記のように酢酸カリウムのような無機塩基を用いることにより、選択的にアルケニルシランが得られた。また、本反応条件は適用範囲が広く、電子供与基、電子吸引基いずれを有するハロゲン化アルケニルにおいても対応するシリル化生成物を収率良く与えた。 従って、ヒドロシランをシリル化剤とする本シリル化は、高い一般性を有し、操作も極めて簡便であり、立体選択的アルケニルシランの合成法として有用であることがわかった。 なお、本年度得られた結果の一部は、日本化学会第75秋季年会において学会発表を行っている。
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