研究概要 |
筆者は昨年度までに、コバルトアセチレン錯体部位を有するtrans-デカリノール誘導体の「連続的環化/転位反応」を鍵とするインゲノールのモデル化合物合成に成功している。今年度は、インゲノールの全合成に向けてA環およびB環への酸素官能基導入について検討を加えた。その戦略として、A環に酸素官能基を導入する目的で、「連続的環化/転位反応」に代えて対応するエポキシアルコールの転位反応を利用することとした。また、B環上の酸素官能基はtrans-デカリノール誘導体にあらかじめ導入しておくこととした。まず、市販の2,2-ジメトキシシクロキサノールを出発原料とし、B環上に酸素官能基を有するtrans-デカリノール誘導体の立体選択的合成を行った。このコバルトアセチレン錯体にメチルアルミニウムビス(2,6-ジメチル-4-ニトロフェノキシド)を作用させて環化反応を行い、3環性アリルアルコールを得た。このもののコバルトアセチレン錯体部位をBirch還元によりオレフィンに変換後、位置および立体選択的シクロプロパン化を行いD環を構築した。アリルアルコール部位を3級水酸基の誘導効果を利用して立体選択的にエポキシドとした後、トリメチルアルミニウムで処理して転位反応を行い、完全なCD環部に加えA環上の1位およびB環上の6位に各々酸素官能基を有するインゲナン誘導体を合成した。このものの1位水酸基を保護した後、6位水酸基をケトンへと酸化し、次いで塩基で処理したところ、メタノールの脱離を伴い4位と5位の間に二重結合を有するエノンが得られた。
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