立体特異性リビング重合で合成した末端に水酸基を有するシンジオタクチック(st-)およびイソタクチック(it-)ポリメタクリル酸メチル(PMMA-OH)を超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)で重合度別に単離し、分子量分布のない(均一な)st-およびit-PMMA-OHを得た。 重合度の同じ均一st-PMMA-OHと均一it-PMMA-OHの等モル混合物を50゜Cで5日間フタル酸ジクロリドの3種類の異性体(o-体、m-体、p-体)と反応させた。反応混合物中には、分子量が完全に同一でブロックの組合わせが異なる3種類の生成物、it-it、st-itならびにst-stブロックポリマー、が含まれるが、再度SFCで分離することで、目的のステレオブロックポリマー(st-itブロックポリマー)のみを単離することができた。 アセトン中0゜Cで、連結ユニットの構造の異なる3種類のステレオブロックポリマー(o-体、m-体、p-体)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定を行った。SECクロマトグラムには、分子内および、分子間のステレオコンプレックス形成にもとずくピークが観測された。また、分子内コンプレックスの生成量はo体が最も多く、st-PMMA鎖とit-PMMA鎖が空間的に近い場所にあることがコンプレックス形成に有利であることが明らかになった。 セバコイル基を連結ユニットに持つ均一ステレオブロックPMMAと比較すると、今回得られたフタル酸エステル型連結ユニットを持つ均一ステレオブロックPMMAはコンプレックス生成の臨界連鎖長が短くなっており、連結ユニットの剛直さもコンプレックス形成に大きな影響を与えることが明らかになった。
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