研究概要 |
不斉配位子-有機金属錯体をアニオン開始剤としてN-置換マレイミドの不斉重合を行い、光学活性ポリマーの合成とその応用について検討した。不斉配位子はビスオキサゾリン、酒石酸誘導体、アミノ酸からジアミン誘導体を新規に合成し、有機金属には有機リチウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、銅アート錯体を用いた。得られたポリマーの比旋光度の絶対値はブチルリチウム-ビスオキサゾリン配位子を用いた場合が最も高い値を示した(N-シクロヘキシルマレイミド(CHMl);[α]_<435>+111.4゚;Macromoleculesで発表)。また、ポリマーの旋光性は用いる有機金属により大きく影響され、特にN-フェニルマレイミド(PhMI)ではブチルリチウムでは[α]_<435>+0.9゚であったが、ジエチル亜鉛の用いると[α]_<435>+94.6゚に向上した(Chem.Lett.で発表)。この傾向は他のマレイミド誘導体(1-ナフチル(1-NMI)、9-フルオレニル(FIMI))においても観測された。ポリマーの旋光性は主鎖の(S,S)および(R,R)の存在比の差に因ることが^<13>CNMR,GPC測定の結果から明かとなった。さらに1-NMI及びFIMIポリマーの円二色性(CD)、紫外(UV)スペクトル測定を行い、これに励起子キラリティー法を適用した結果、正の旋光度を有するポリマーは(S,S)配置を多く含み、負の旋光度を有するポリマーは(R,R)配置を多く含むことが明らかにした(平成10年日化年会で発表)。一方、光学活性ポリマーの応用研究はジエチル亜鉛-ビスオキサゾリン配位子により得られた1-NMIポリマー([α]_<435>+190.5゚)とrac-1,1′-ビ-2-ナフトール(BINOL)との混合物の^1H NMR測定結果により、光学活性N-置換マレイミドポリマーは、鏡像異性体識別能を有することを明かにした(オーストリア国際会議で発表)。
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