本研究では、高分子溶液中に強磁性微粒子を分散させた磁性塗料に対し、磁場を印加した際に観察されるレオロジー挙動の変化から、塗料内粒子配向挙動を明らかにすることを目的とし、また、その際の磁性粒子配向構造を確認するため、磁場中において塗料を急速凍結させてクライオSEMによる直接観察を試みた。以下に得られた知見を示す。 1. レオメーターにスリットせん断治具及び磁場印加装置を装着し、磁場中における磁性塗料の動的粘弾性特性を測定した。磁場を印加すると、貯蔵弾性率(G')が急激に増加すると共に、損失正接は減少し、また磁場強度の増加に伴いその傾向はより顕著になった。これは磁性粒子の配向を反映した結果てあり、本手法により、塗料内粒子配向挙動評価が可能であると考えられる。 2. 磁場印加角度を変化させたところ、スリット表面に対し垂直に磁場を印加した場合、最も大きなG'が得られた。粒子配向方向は磁場印加方向と平行であり、またこれらが連結することにより鎖状クラスターを形成していると判断した。 3. 磁場応答性の良否を、磁場印加時のG'を無磁場の際のG'で除した相対貯蔵弾性率により評価した。相対貯蔵弾性率は、粒子分散性が良好な場合大きな値を示し、磁場による配向が生じ易いことが確認された。粒子配向性向上には、塗料中での粒子高分散化が必要不可欠である。 4. 数種の強磁性微粒子を用いて比較検討したところ、飽和磁化及び軸比が大きなメタル鉄微粒子を用いた塗料において、最も大きな磁場印加効果が得られた。 5. クライオSEMにより粒子配向構造の観察を試みたが、現在の塗料組成では溶媒融点と鏡筒内温度が近く凍結が不完全であり、観察中にガスが発生するため観察できていない.今後、融点のより高い溶媒を用いたモデル塗料での観察や、観察条件を変えて粒子配向構造の観察を試みる予定である。
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