本研究では、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)等のヘムタンパク質の、有機溶媒中での構造を赤外分光法で解析し、活性との相関を検討した。 IRスペクトルの測定は日本分光社製FT/IR-620赤外分光光度計を用いて、10μmスペーサーを介して2枚のフッ化カルシウム窓板にサンプル溶液をはさみ、恒温循環水で温度を制御したヒートブロックに固定して行った。 DMSO濃度を変化させHRPのアミドIバンドを測定したところDMSO70%程度までは構造の変化が徐々に起こり、α-ヘリックス含量が減少した。75%以上ではタンパク質の凝集体に特異的なバンドが1616、1684cm^<-1>にみられDMSO80%で最大になった。さらに、ヘム鉄に配位するプローブであるCOのIRスペクトルを測定したところ、ヘム鉄付近の構造は、DMSO濃度の増加と共にDMSO70%までは徐々に変化し、80%以上ではヘムが脱離していることが分かった。また、[Ru(bpy)_3]^<2+>、[Co(NH_3)_5Cl]^<2+>を用いてHRPを光化学的に酸化し、休止状態から活性中間体であるcompound IにいたるアミドIバンドの赤外差スペクトルを測定したところ、有機溶媒濃度が低い場合の活性中間体の構造変化は、緩衝液中の差スペクトルとほとんど変わらず溶媒濃度が低い場合影響が小さいことが分かった。 また、HRPをポリエチレングリコールで修飾して、水と非相溶な純有機溶媒に溶解させてアミドIバンドを測定したところ、ベンゼン、モノクロロベンゼン中では2次構造の変化は小さいが、ジクロロベンゼン中では構造が大きく変化していることが分かった。
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