研究概要 |
本研究の最終目的は,高分子の複屈折の波長依存性を利用して,ブレンド中の成分高分子の鎖の配向を区別して求めることである.初年度は,複屈折の波長依存性に関する基礎データの集積という観点から研究を進めた. ポリスチレン,ポリカーボネート等の高分子について,ゴム状態,ガラス状態で発生させた.複屈折の波長依存性を測定した.その結果,波長依存性は予想どおりに,配向度には依らないことが確認された.また,複屈折の波長依存性は屈折率の波長依存性よりも強いこと,さらに,ゴム状態での複屈折の波長依存性は光学的異方性が大きい高分子ほどほど強くなる傾向を示すことがわかった. 一方,ガラス状態での複屈折は,ゴム状態での複屈折よりも弱い波長依存性を示すことが明らかになった.これは,ガラス状態のでの複屈折の発生機構が,ゴム状態でのそれと異なることを示しているものと考えられた.修正応力光学則を用いて複屈折の発生機構を二つの成分に分離し,ガラス状態での複屈折の発生機構の波長依存性を求めることに成功した. ポリスチレンとポリフェニレンオキサイドの混合系を作成し,これをガラス転移以上で延伸して種々の配向度を持つ配向試料を作成した.この複屈折の波長依存性から二つの高分子の配向を求めた.その結果を赤外二色性による結果と比較したところ,よく一致した. 次年度は,本年度の研究成果を踏まえ,伸張試験機にスペクトロメーターを含む光学系を直接取り付け,延伸過程での配向変化を時間の関数として測定することを目指し,高分子のブレンドの配向緩和のダイナミックスについて調ベる計画にしている.また,コーン・プレート型のレオメーターにも適用して,液体系での測定も目指す.
|