研究概要 |
超音速流中における水素-酸素の白金触媒反応の機構を明らかにすることを目的として,水素-空気予混合超音速小型風洞(流路断面積1cm^2,マッハ数1.81,予混合タンクから真空タンクへの吸い込み式)を制作し,実験を行った.白金線は長さ2mm,直径25μmで,流れに垂直に張られている.定温度型熱線風速計の原理を応用した制御回路により,白金線の温度は一定値に保たれている.このとき,白金線に供給される電力を測定する.同様の実験を,白金線の代わりにニッケル線を用いて行う.ニッケル線を用いた場合は触媒反応による発熱が無い分,供給電力は多くなる.すなわち,白金線を用いた場合とニッケル線を用いた場合の両供給電力の差が,大雑把には触媒反応による発熱量に相当する.詳細には,白金とニッケルの熱伝導率等物性値の差,および軸方向温度分布の差を考慮した熱収支方程式を解くことにより,発熱量を算出する. ニッケル線/白金線の設定温度,および超音速流(水素-空気予混合気)の水素濃度を変化させて上記実験を行った結果,以下の結果が得られた.白金線の温度が充分に高い条件(500℃以上)では,触媒反応による発熱量は白金線温度に依存しない.すなわち,白金線表面での触媒反応は律速段階とはなっておらず,白金線表面への化学種の輸送が律速段階になっていることが明らかとなった.また,混合気が理論混合比のときに発熱量は最大となる.白金線表面では,水素希薄の条件では水素濃度が0,水素過濃の条件では酸素濃度が0になると仮定して得られた物質伝達率と,熱伝達率との比は,混合気の組成に依らずほぼ一定であった.すなわち,熱伝達率と混合気の組成が明らかになれば,発熱量を予測することが可能であることが示された.
|