ケーブルおよび膜、ビーム、プレート、シェル等からなる展開宇宙構造物のダイナミクスを有限要素解析するコードを完成し、ケーブルおよび膜に圧縮力が作用してスラック状態になった時の静的挙動および動的挙動の数値解析をおこなった。そして、膜面の静的大変形の計測実験をおこない、数値解析結果との比較をおこなった。その結果、以下の知見を得た。すなわち、(1)スラック状態になってしわが発生した膜面の形状は、圧縮時の面内剛性を引張時に比べて大幅に小さくする(100万分の1程度以下)ことで数値的に模擬でき、実験結果とよく一致する。(2)微小重力下で膜面を展開・収納すると、膜面は紙を折り畳むような変形を呈する。(3)膜面の収納の数値シミュレーションをおこなった結果、効率のよい膜面折畳み方法を見いだすことが出来た。この折畳み方法は単に幾何学的な関係のみから得られたものではなく、膜面の弾性変形を考慮した解析から得られたものである。(4)微小重力下では、境界条件によっては膜面のわずかな曲げ剛性が変形形状全体に影響を及ぼす。その例として、人工衛星搭載用の1軸展開方式の太陽電池パドルの収納解析をおこない、膜面の曲げ剛性の値によって、初期状態に収納できないケースが存在することを確認した。以上の知見は、実験的に予想はされていたことであるが、これまで数値解析が困難であるとされてきたものである。特に、膜面がスラック状態に陥った時の挙動は従来の汎用ソフトウェアでは十分な解析ができないとされていたものである。しかし、本研究では時間積分において系全体のエネルギ変化を考慮にいれることで、ダイナミクスを収束性よく安定に解くことに成功した。また、今後、上記の解析コードによるダイナミクスの解析結果の検証をおこなうため、デジタルカメラと画像解析ソフトからなる3次元運動計測装置を製作した。
|