研究概要 |
海上石油備蓄基地の貯油タンクや海上浮体式空港のような超大型浮体式構造物においては,防食塗装とアルミ合金犠牲陽極との併用による複合防食システムを施工し,防食電位モニタリングを実施しながら必要に応じるメンテナンスを行うことにより,長寿命化が図られると考えている。 従って,ROVを用いて構造物近傍海水中での電位分布を計測することでその没水部表面の防食状態および複合防食システムの劣化挙動を常に把握してより合理的な補修工事を実施することによって複合防食システムの機能を確保するのは防食電位モニタリングシステムの開発目的となっている。 そこで本研究では,大型浮体式構造物について,水中電位計測に基づく防食状態および防食システムの劣化挙動の評価プロセスを確立した上で,さらに海上貯油タンクにおける複合防食についての評価基準を明らかにした。研究成果の要約は以下の通りである。 (1)メガフロートの実験モデルにおける複合防食システムについてシミュレーション解析を行った結果,大型浮体式構造物における複合防食システムに適用できるシミュレーション解析の一般的なアプローチを確認した。 (2)構造物近傍海水中での電位分布は構造物没水部表面の防食状態に良く対応することを明らかにした。 (3)アノード直下水中電位の値および深さ方向における電位の変化は,塗膜の劣化状態およびアノードの消耗挙動に良く対応することを明らかにした。 (4)海上備蓄基地の貯油タンクにおける複合防食システムについては,その近傍海水中での電位分布と,塗膜の劣化状態およびアノードの消耗挙動との相関関係をそれぞれ求めた。 即ち,水中計測電位に基づく貯油タンク没水部表面の防食状態および複合防食システムの劣化挙動の評価基準を明確にした。
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