研究概要 |
水稲の不耕起直播栽培は最も理想的な省力,低コスト栽培技術の一つである.本研究では種々の植物ホルモンが不耕起直播栽培イネの苗立ち率及び各器官の伸張に及ぼす影響を室内試験及び圃場試験で検討した.水稲品種「こころまち」を供試した.まず,室内試験で,アブシジン酸(ABA),エチレン(ET),ジベレリン(GA)が高出芽・苗立ち率の確保に有望であることを認めた.続いてこの3種の植物ホルモンについて,圃場試験を行った結果,対照区で苗立ち率は51.0%であったが,GA単独処理で63.7%,ABAとETの併用処理で63.7%,ETとGAの併用処理で70.7%と対照区に比べて有意に増加した.また,草丈に対する影響を見たところ,ET単独処理を除いて増加し,特に,ABAとET併用処理で65.4mm,ETとGAの併用処理で62.2mmとなり対照区(51.8mm)に比べて有意に増加した.次に,各器官の伸長量に及ぼす影響を見たところ,鞘葉は植物ホルモンにより伸長量が増加する傾向が認められ,第1葉,第2葉では植物ホルモンの併用処理によって単独処理よりも長さが増加する傾向にあった.また,第2葉鞘についても同様に植物ホルモンの単独処理よりも併用処理によって伸長がより促進され,特に,ABAとETの併用処理で29.6mmとなり対照区(24.3mm)に比べて有意に増加した(これらの結果は 日本作物学会第206回講演会で発表した).このように,本年度では植物ホルモン処理により,不耕起直播栽培イネの苗立ち率が増加しさらに各器官の伸長の促進効果が認められた.さらに,その効果は植物ホルモンの単独処理に比べて併用処理のほうがより顕著であった.次年度では、この作用機作についての基礎検討と共に植物ホルモンの処理がその後のイネの生育及び収量性について精査する予定である.
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