筆者らは過去に、登熟初期に葉身窒素含有率が高いほど、玄米中のアンモニア態窒素濃度が高く、粒重増加が小であることより、高アンモニア態窒素濃度が粒重抑制の一因であると推察した。しかし、粒重が小であれば、玄米中のアンモニア態窒素濃度が高い可能性も否定できないので、登熟初期における玄米中アンモニア態窒素濃度と粒重増加との因果関係を確認するための実験を行った。 <材料と方法> 品種日本晴を用いて、玄米中のアンモニア態窒素濃度に差をつけるため、窒素施肥量を変えて、かつ穂部への処理(グルタミン合成酵素活性阻害剤およびサイトカイニンを穂部に塗布)を行った.さらに、粒重増加速度に差をつけるため、穂部のみを約3℃の高温に保つ区を設け、これらの個体について玄米中のアンモニア態窒素と粒重増加量を調査した。 <結果> 1.グルタミン合成酵素活性阻害剤を穂部に塗布すると、粒重増加は著しく抑制され、玄米中に多量のアンモニア態窒素が蓄積した.グルタミン合成酵素活性阻害剤を塗布後にサイトカイニンを塗布すると、粒重抑制は軽減された.一方、穂部を高温に保つと出穂10日までの粒重は対照区よりも大となったが、最終粒重に差は認められなかった. 2.粒重増加に差の見られた登熟初期(出穂10日後)において、玄米中のアンモニア態窒素と1粒重との関係は、高温処理を除き、高い負の相関関係(r=-0.939^<**>)が認められた。一方、対照区の1粒重は高温区より小であったにもかかわらず、玄米中のアンモニア態窒素濃度に差は見られなかった.これらより、粒重増加が小さい個体の玄米中には必ずしもアンモニア態窒素が蓄積するわけではなく、玄米中にアンモニア態窒素が蓄積することによって、粒重増加が抑制されることが確かめられた。
|