研究概要 |
イネ科作物3種(トウモロコシ,パールミレットおよびヒエ)を供試し,成長部位が根のみである「葉ざし」個体を作出して低培地水ポテンシャル下における根の成長について調べた.生育の途中から培養液にポリエチレングルコールを添加した水ストレス区(培地の水ポテンシャル-0.54MPa)と添加しない対照区(培地の水ポテンシャル-0.02MPa)を設けた.パールミレットとヒエは水ストレス下でも光合成・葉の水分状態を低下せず,根の成長を維持したのに対して,トウモ口コシは光合成・葉の水分状態を著しく低下し,根の成長も大きく減少することが判明した.パールミレットとヒエは低培地水ポテンシャル下でも根の乾物重の相対成長率を保持し,側根の比根長を増大したため根の成長速度を維持したことを明らかにした.この結果については論文にまとめ,現在Plant Production Scienceに投稿中である. これらの結果から耐乾性の強いパールミレットと耐乾性の弱いトウモロコシを用いて水耕栽培を行ない,液面低下に上る水ストレス処理を行なった.パールミレットの同一個体における,水面上と水中それぞれの根についてタンパク質の2次元電気泳動を行ない,水ストレス処理により53kDaのタンパク質が減少し,23,28,36,38kDaのタンパク質が増加したことを明らかにした. 以上のイネ科C4作物における現象がイネ科C_3作物においても見られるかどうかについて,浮稲・陸稲・水稲を含むイネ27品種を供試して耐乾性の品種比較を行なった.生育の途中から潅水量を低下する乾燥区と十分に潅水を行なう湿潤区を設けて各品種を栽培した.イネ27品種の耐乾性には著しい品種間差異が認められ,浮稲品種であるBakoiは最も耐乾性が強く,水稲品種である亀の尾は最も耐乾性が弱いことが判明した.この耐乾性の品種間差異はイネ科C_4作物と同様に主に根の成長に規定されていることを明らかにした.この成果は1999年4月2〜3日に開催される日本作物学会で公表する.
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