近年、人の生活環境を支える生物的自然を求める声が高まっている。その基盤となる地域生態ネットワーク構築に対して、低地湧水型の湿性緑地は多様な生物の安定した生活の場、遺伝的供給源として重要な拠点になることが予想できる。本研究の目的は、低地湧水型の湿性緑地と生物の関係性を指標化することである。2年間の研究期間であるため、指標として有効と考えられる生物の種、あるいは種群の選定と特性の把握、それらと対応した環境要素の分析等、環境要因の具体適把握に向けた研究の道筋をつけることを目標とした。 今年度は、調査地の選定及び現地調査、文献調査、ヒアリングによる予備調査を行った。対象生物についても上記と同様の予備調査を行った。また、地域的な緑地分布についても調査を行った。 鬼怒川の扇状地帯であり、低地でありながら現在も湧水型の湿性緑地が残存する宇都宮市とその近郊を対象にし、地形図上にプロットを行っている。その作業の中で低地湧水型の湿性緑地の分布と、地形的、水文的条件との関連性、さらに他の地域的な緑地分布との関連性が示唆された。また、低地湧水型の湿性緑地に対応性の高いと思われる動植物の種について文献、ヒアリング、現地調査などから予備的選定を行っている。これらの分布、生態的知見は経験則的なものが多いので、代表的な種を選定し、具体的な環境条件を明確にする必要がある。 いくつかの対象候補地が得られたので、来年度はさらに具体的な環境要因、動植物の指標的種の選定などを行う予定である。
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