これまでニホンナシはノンクライマクテリック型の果実とされ、成熟果実のエチレン生成はほとんどないものとされてきた。しかし、80品種にわたるニホンナシ成熟果実のエチレン生成量を調査した結果、全く生成の認められないものから生成量の多いセイヨウナシと同程度(100μl/kg/hr)認められるものまで、品種によって著しい差があり、さらにその生成能力が貯蔵性と密接にかかわっていることが判明した。そこでこのようなエチレン生成量の著しい品種間差を明らかにすべく、エチレン生合成経路に存在する二つのKey酵素である、ACC合成酵素及びACC酸化酵素の全鎖長cDNAクローニング行った。これまでに単離した3タイプのACC合成酵素の内、2つのタイプの遺伝子をプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーションを行う遺伝子診断法により、ニホンナシ35品種の果実のエチレン生成量を3つのグループに分類できることを明らかにした。この診断法を鳥取大学で育成中の約200系統におよぶ実生集団(おさ二十世紀自殖系統、おさ二十世紀X新水、幸水、豊水、愛宕、慈梨等)に対する適応性を検定し、貯蔵性の遺伝子診断法を確立した。
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