果実や果菜の貯蔵性に対するへタ及び果梗の機能に関して研究を行った結果、特に、近年大きな問題となっているカキ果実の収穫後の軟化について、以下のようにその生埋的機構を明らかにするとともに、安全かつ簡便な防止法の開発に成功した。 1) ‘平核無'未熟果を収穫し、湿度40〜60%の条件で保存すると、3日以内にすべての果実が急激な軟化を示した。しかしながら、果実よりへタ片を除去し、さらにその切り口にワセリンを塗布することによりヘタ片の働きを抑えると、軟化は著しく抑制された。その際、ワセリン処理により果実の減量率が抑えられており、ヘタ片を介した水分蒸散が軟化を引き起こしている可能性が考えられた。2)同様の‘平核無'果実について、有孔ポリ包装を行ったところ軟化が抑制されたことから、水分蒸散が軟化を引き起こしていることがより確実となった。また、エチレン作用阻害剤であるMCPを処理すると、軟化が抑制されたことから、軟化には水分ストレスによって誘導されるエチレンが関与していることが明らかとなった。3)ハウス栽培の‘刀根早生'果実について、2)と同様の有孔ポリ包装とMCP処理を行ったところ、いずれの処理でも軟化は顕著に抑制され、ハウス‘刀根早生'果実でも‘平核無'未熟果と同様の機構により軟化がおこっていることが明らかとなった。 以上より、カキ果実においてみられる収穫後の急激な軟化は、果実のへタ片を介して行われる水分蒸散によって引き起こされるものであり、水分ストレスによって誘導されるエチレンが密接に関与していることが明らかとなった。また、本研究で用いた有孔ポリ包装による軟化防止法は安全かつ簡便な方法であり、今後、ハウス栽培の‘刀根早生'果実などにおいて実用化に向けての研究を行っていく予定である。
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